乱暴者たち

殊勝な態度を示そうと顔色をうかがっていた。疲れた。 帰宅後、不安に陥り、急に怖くなった。運動か勉強か日記で回復しようと思った。日記を書くうち復活した。一日を振り返ったが、大事な所の記憶がすっかり抜け落ちていて焦った。どうでもいい気がしてきた…

コロナの頃

近所の生協で地元の市議会議員を見かけた。自民党所属の割に発言は完全に左寄りの人で、とはいえコープを利用するのかと、何となく不思議だった。 どうして分かったかというと、マスクを着けてなかったから。なんでマスクが気になったかというと、自分がコロ…

勝手に着ろ

書きながら考えているのは、奥にあるはずのコートについて。 禁酒を続けているのに減らない体重が不思議だった夏、私は毎日のように甘菓子を食べ、甘い飲み物を飲んでいた。アメリカ人は中年でも炭酸飲料を飲むしな、と決まって映画「リトル・ミス・サンシャ…

その街は今

「植木の街」を謳う看板が外されて、その場所は更地となった。分厚い葉が年中黒かった。部屋の隅で軽金属やアダプターが見つかれば、持って行った。挟んでいた脇を緩めると、草に吸い込まれた。着地の音は聞こえなかった。不法投棄撲滅の札が立った。落とし…

ナスオと読みたい『あたしンち』

今年は、けらえいこ『あたしンち』(メディアファクトリー)が楽しみだった(「父の生きがい」7巻21話)。ある日のこと、「落としたペンを拾ってもらう」(6巻19話)みたいな僥倖で読み始めたのだが、気が付けば「寿司ネタ図鑑」(2巻22話)のように夢中にな…

野に野犬あり

話し声に振り返ると、器を片しながら会話しているようだった。実家から、と見て新聞記事に視線を戻す。「今年は帰れると思う」なぜか声が沈んで聞こえた。驚いて再び顔を奥に向けると一瞬、目が合った(ような気がした)。真意は伝わった、が、これは後でち…

甦れ カート・コバーン

Seth『IT'S A GOOD LIFE, IF YOU DON'T WEAKEN』を読んだ。物語の中頃で主人公の Seth が “ What a feeble Holden Caulfieldish type fantasy ” と自嘲する場面があって、自分は「あ、ついに来たな」と思った。 『ライ麦畑でつかまえて』(どころか J・D・サ…

教えてバルサザー

『ODD ZINE Vol.5』を読んだ。惰性で入った店に長居してしまい、謝るようにして購入したものだ。キリの良い値段が決め手となった。青木淳悟の「最近は私小説に興味津々」の一節にECD*1の事を思い出し、考えた。写真も良かった。バックナンバーを確認すると、…

詫び状を詫びる

うす塩味の袋菓子を一人で空にして、中に割り箸を詰めて床に捨てた。これでやっとネットに集中できる。お茶を淹れるため台所に出ると、何やら粉末の重さを量っているようだった。「明日の?」「んー上手くいけば」横でお湯が沸くのを待っていると、気に障っ…

そうさ右往沙翁さ

小山田浩子「斉木君」シリーズの「僕」役を磯崎憲一郎、「斉木君」役を辰巳ヨシヒロの自伝的作品である『劇画漂流』(青林工藝舎)下巻に登場する雨宮という脚本家志望の男性(丸顔丸眼鏡の団子鼻、口髭顎鬚を蓄えた狸面の居候で料理が得意)に振り当てて話…

本質的に不健全

思わぬ落ち度があったと聞いて、爺二人が夜の学園都市に駆け付けた。幸いにも大事には至らず「今年の桜は散るのが早かったスねぇ」「そうさなあ」気の抜けた感じで歩いて行く。 pitchblende『Au Jus』94年初頭にジョン・マッケンタイアとケイシー・ライスに…

雨後の筍 恥の上塗り

引率、と云っても一人きりなので、要は只の付き添いで赤い電車に乗っている。中々の縁故採用で、少々変わった人物と聞かされてはいたけれど、まさか座った途端に本を開くとは思わなかった。数秒待って、例えば自分の将来を案じるなどしてから、好奇心を抑え…

my brain hurts

今回も長く口内炎に苦しんだ。回復を期待して控えた酒も、効果があったのかどうか。藁にもすがる思いで検索した「コロナ 口内炎」、あれは一体何だったのだろう。いよいよ医者を訪ねようと決意した日曜の朝、面倒な知らせが届く。 顔を歪ませて caP'n Jazz『…

暴力大将 沈黙の費用

がさがさ音がするので、瓶の口を親指で蓋しながら戸を開ける。スポーツジムの営業時間が通常に戻ったとかで、「俺も行く」迷惑そうな後を追ってこんな時、マスクはとても便利だ。 禁酒期間は終了した。飲酒を再開してからの、当初4日おきの頻度が2日に一遍へ…

絶対的アグレッション

金曜は風が吹き荒れて、未明に降り出した雨がやがて豪雨となり昼過ぎまで続いた。音量を上げざるを得ない程の雨脚。2度目の映画『グリーンブック』で、またもや同じ場面で泣いてしまった。政治的な批判を目にした後でも、やっぱり同じところで涙を拭ってしま…

私の嫌いな私の世代

数日前に半値で買った無糖の紅茶が捨て値で売られていた。今度は六本ひとまとめにされて売り場に山を作っている。一口飲んで甘さに驚いて、何を思ったかお湯で薄めるとさらに香り立ち、これで酒を割ったらさぞかし美味かろうと思っていたのだった。歓喜して…

決死の跳躍

稀に二人が揃って同じ番組を見ることがあった。背筋を真っすぐにして胡坐を組む様を後ろから観察して、相変わらず姿勢が良いなと思った。そのままを口にしてみると、ふふんと笑って胸を反らした。ほっとした自分も実はテレビが気になっている。向かってくる…

サムシング・イン・ザ・ウェイ

1.何かが引っかかる ケヴィン・スミスのグランジ映画『クラークス』の一場面。 www.youtube.com SNFU『The Last of the Big Time Suspenders』の裏表紙にもホッケー競技。 www.musik-sammler.de スケートはスケートでもアイススケートのスケートロックなのか…

ゴーゴー!老化作戦。

目が覚めて、カーテンを開けると窓の外は意外に暖かかった。上機嫌で部屋に入っていくと、ソファから上体を起こして「おはよ」と。「うん。天気も良いし、どっか行く?」誘ってみるも、今日は調子が悪い、すげなく断られすれ違いざま、いやに体臭が濃かった…

カート・コベイン ドナルド・トランプ

陽気に誘われて、薄着で外に出た。何やかやあって、いろいろ調べるはめになった。検索ワードは「ドレスダウン」、「カジュアルアップ」、「フランネル」、「ランバージャック」。 ネルシャツよ 永遠なれ ブルース・パヴィット(サブポップ元社長)、格子柄が…

芳兵衛とくになし

最近は夜の十時を過ぎると辺りはもう、真夜中の気配がする。帰宅して早々、事故か何かあった?と尋ねるので「特には」と答えた。今日は風が強く吹いたという。列車の走る音がいつもより凶暴に聞こえたそうだ。着替えようとして部屋に入れば、床が散らかって…

津村記久子 レモンヘッズ

■ 過去の過ち GIMME INDIE ROCK ! 島田潤一郎『90年代の若者たち』(岬書店)を読み終えて、チャゲアス動画をひとしきり漁った後、本で触れられていた(pp.59-60)ペイヴメントのライナーノーツを手に取った。『ブライトゥン・ザ・コーナーズ』の該当箇所で…

ブーンバップ爺になりたい

釜揚げうどんの汁に胡椒を振りかけるのを見咎められ、言い訳として食後のコーヒーが美味くなると答えた。「食べものの話になると饒舌になるよね」嘲笑されて、内心「なにをっ」となったが、昔、スマパンの『メロンコリー~』がお気に入りと小耳に挟み、頼ま…

こじつけNIRVANA

店が閉まっているので酒を止してみた。三日後、腰回りの異様な軽さに調子付き、意味もなく階段を駆け上ったり、人気のない街を二駅半歩いたりして、翌日は両脚の激痛に苦しんだ。さらに何事もなく三日が経過して、断酒は続いている。饅頭を求めて入ったコン…

嘘の人生 pt.Ⅱ

親戚の集まりで久々に正座をした。読経中、何も考えないよう努めたが、どうでもいい事が次々に浮かぶ。今村夏子『星の子』の仕出し弁当のくだり、『あひる』所収の魔剣とんぺいを思い出してマスクの下が動く。 会場は海辺の高台にあって、いや山ン中だな、来…

ポスト・ハードコア ローファイ・ミュージック サンディエゴ

つづき 帰宅後、PITCH FORK, DRIVE LIKE JEHUとTRUMANS WATER, SOUL JUNKを聴き比べた。共通する部分があるような、全然ないような気もする。どちらも共にサンディエゴ出身で活動時期もさほど変わらないと知り、両者の関係が気になった。 地元の先輩BATTALIO…

なんだこれは

昼、古本屋を二軒廻って四冊の安い本を買い、ふと路地に入ったところで何故だか急に悲しくなってしまった。さらにこれまた原因不明の焦燥にも苛まれた結果、仕方なく図書館に救いを求めた。 最新の雑誌を取っ替え引っ替え、ぱらぱらと捲って満足した後は、目…

Aimee Mann GangGreen 

ギャンググリーン「another wasted night」CDにエイミーマンが写っていて、それは「P.M.R.C. SUCKS」12''EPのジャケットらしく('til tuesdayのvoices carryカバー?収録)ライナーノーツに顛末が記されていた。(エイミーマンのcease & desist letterをレコ…