なんだこれは

 昼、古本屋を二軒廻って四冊の安い本を買い、ふと路地に入ったところで何故だか急に悲しくなってしまった。さらにこれまた原因不明の焦燥にも苛まれた結果、仕方なく図書館に救いを求めた。

 最新の雑誌を取っ替え引っ替え、ぱらぱらと捲って満足した後は、目的もなく館内をうろつく。新鮮味のある情報に接して気持ちが昂ったのか、挑発的なタイトルの本がやたらと目に留まる。のんびりした館内放送が短時間の滞在を奨励する、何度も。西崎憲『全ロック史』(人文書院)を立ち読みした。ポスト・ハードコアとローファイの章だけ読んで、指先を念入りに除菌して帰った。

 帰り道、後頭部を紐で引っ張られるような感覚に続き、目元が震えだして意識が遠のいた。やばいやばいと大慌てしてあんまんを買い、軒先で食べようとするが客の出入りが多すぎる。歩きながら食おうにも、次々に人が現れる。ついに雑木林が見えたところで、閃いて、自販機で緑茶とお汁粉を買う。散策路の木製ベンチ(排除アート無し)に腰を下ろし、貪り食った。一息ついて見上げた空がやけに白かった。葉の落ちた木々の梢がまるで「血管のようだ」わざわざ口にしてニヤニヤ笑った。

つづく