絶対的アグレッション

 金曜は風が吹き荒れて、未明に降り出した雨がやがて豪雨となり昼過ぎまで続いた。音量を上げざるを得ない程の雨脚の中、2度目の映画『グリーンブック』、またしても同じ場面で泣いてしまった。政治的な批判を目にした後でも、やっぱり同じところで涙を拭う。

 地域振興券を使ってみようと提案したところ、既に新聞購読料として支払われていた。一瞬、見合ってしまうような間があって、二人して笑い転げる。一緒に出かけた。とはいえ、用足しは別行動。自分は、まあ、レコードを買った。CDで持っているので内容は分かっている。お金を渡す時は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたと思う。

 食い気の却って収まらない食事を済ませ、帰る。チートスが食いたい。アボカドチップスでもいい。目が疲れ、肩が凝って仕方ない。小島信夫の短編で「低血圧なのに眼底出血」云々の話があったが、題名はおろか内容すら思い出せず苦悶する。とにかく右の目頭と目尻がヒリヒリするので目蓋を閉じると瞳に人工的な赤い細かな網目模様が現れる。

 跨線橋の階段にて「足元に気を付けて!」得意げな調子が笑いを誘ったようだった。目の周りを気にしながら上って行く。橋上のクランクに差し掛かったところで後ろから服を引っ張られた。危うく深い水溜まりに足を突っ込むところだった。桜はまだ早かったが、平和な一日を実感した。他は知らない。

 帰宅。こんな時間でも鍋や包丁を動かしている横でレコードを広げる。「リルケじゃん」「へ?何が」うわ~、さすがだ~。感嘆ついでに「atrophy ってどういう意味?anathema って何?」など歌詞について次々質問すると、易々と答える。昔、友人のバンドを見せられて、はいはいエモ系ね、と心中、大いに白けていたが、終演後は酒に酔って賞賛を繰り返した。言われた方は困った表情を浮かべて、それが癪に障るのだった。頭のいい奴は会話に変な間を置くなあ、と思って後日、権威勾配を利用して真似てみると大変気持ちが良かった。反省している。ところで、そいつが例の「言わないとゴムを付けないばか男」だと知った時の心中たるや。