その街は今

 「植木の街」を謳う看板が外されて、その場所は更地となった。分厚い葉が年中黒かった。部屋の隅で軽金属やアダプターが見つかれば、持って行った。挟んでいた脇を緩めると、草に吸い込まれた。着地の音は聞こえなかった。不法投棄撲滅の札が立った。落とし物の自粛が始まった。

 小学校の真横に家が建った。昔は畑だった。直売の芥子菜を食べたらブロッコリーの味がして、得した気分になったものだ。体育館は投票所に使われた。誰に入れればいいんだよ、という選挙があって、スケートパークの修繕を訴えていた人が当選した。

 街道の延伸工事が再開された。きれいに舗装後、金網で放置されていた。その網が一部消えている。傾斜と凸部が絶妙に残されていて、ちょっとだけ試してみたかった。問題は民家がすぐ傍にあることだった。古くて奥行きのある平屋に停まっているのは軽トラだけで、危険的な高級車は見当たらない。

 暗くなるのを待って、実行した結果、早々に老爺が現れた。キウイフルーツを抱えている。売れ残りを下げてきたという。即座に申し出て、聞かれる前にその場を去った。家に帰ると珍しく興味を持たれたが、何を言っても変わらない気がして、しょーもない嘘をついた。

 夜中に思い出して、食ったら、うまかった。また買いに行こうと思っていたのに、地面は剝がされてしまった。