嘘の人生 pt.Ⅱ

 親戚の集まりで久々に正座をした。読経中、何も考えないよう努めたが、どうでもいい事が次々に浮かぶ。今村夏子『星の子』の仕出し弁当のくだり、『あひる』所収の魔剣とんぺいを思い出してマスクの下が動く。

 会場は海辺の高台にあって、いや山ン中だな、来るたびに区画が拡がっている気がする。立原正秋高井有一が酒樽を担いで歩いた尾根道、永井龍男の雑談衣食住の感じ。酒が入って血縁者と猥談。血が濃いというのもなかなか厄介ではある。少し酔って遠くに海を望みながら、うとうとした。

 「着いたよ」、と起こされるまで車内に会話はなかった。兄弟ってすげーな、ひとり感心する。紙袋を渡され、なんか重いので覗いたら500mlのビール2本と食パン一斤が入っていた。駅前で週プロを買って、空きの多い座席にほっとして、お構いなしにむしゃむしゃ食った。

 以前は冠婚葬祭で帰る際は、例えば人気大学教員の道徳的な本などを前日近くに購入して、結局は大して読みもせず、それでも、いいとこ見せなきゃ、なんて気を張っていたものだが、まあ杞憂だった。大抵は大声で近況を伝え合って終わり。ただ本当に疲れた。迎える方も大変なんだよ、年寄った母親が言った。