詫び状を詫びる

 うす塩味の袋菓子を一人で空にして、中に割り箸を詰めて床に捨てた。これでやっとネットに集中できる。お茶を淹れるため台所に出ると、何やら粉末の重さを量っているようだった。「明日の?」「んー上手くいけば」横でお湯が沸くのを待っていると、気に障ったのか、作業を中断して屑を拾い始めた。自分も気づいて部屋へ戻り「これもお願い」と、袋をボキィっ‼と折って絞り上げ、ゴミ袋の結び目にねじ込んだ。

 「延長されたら、どうします?」何事かと思えば植え込みの件で、そうだそうだ連絡しとかないと。「CSR、去年はかなりお冠だったようで」「なんか春の味覚がどうとか言ってたな」「お店でどうぞって感じですかね」「此処らでは滅多にお目にかかれないらしいよ」実際、あれは掘り出してからが大変なんだ、洗うのが面倒で。生で食うなら尚更だ。

 冷やし中華の具材を揃えながら、母親との通話に聞き耳を立てた。互いに入り組んだ相槌を打って、同じ話題が行ったり来たりしている。最後にはため息が漏れていた。翌日、何も持って来ぬようあれほど注意したにも関わらず、自家製リキュールと大量の山菜、埃っぽい箱に入った謎の焼き物を持参して来よった。こちらとしても準備は万端で、自分は何もしていないが、色鮮やかな西洋料理が食卓に並んだ。一通り済んでから、父親が「きゅうりねぇか」と聞いてくる。洗って渡すと「脂っこいもんの後にはこれが効く」と言って、丸ごと齧りだした。母親はその横で「あら、なんでしょ」と可笑しそうにしている。 

 マスクを着けて二人を見送る。運転席に座ろうとして「あ、ちょっと」、声を掛けられたノーマスクの母親が「アタシ飲んだんだ」と頓狂な声を出す。父親は訛りに遠慮が無くなったように思う。(母親のために)用意した舶来物の酒は「出先で貰った」と説明していたが、本当は買った。片付けを頑張れば払拭できるだろうか、足早に歩く背中を追いかける。