my brain hurts

 今回も長く口内炎に苦しんだ。回復を期待して控えた酒も、効果があったのかどうか。藁にもすがる思いで検索した「コロナ 口内炎」、あれは一体何だったのだろう。いよいよ医者を訪ねようと決意した日曜の朝、面倒な知らせが届く。

 顔を歪ませて caP'n Jazz『Analphabetapolothology』CDを聴く。93年にこの音楽性は大したものだ、偉そうに歌詞を確かめるも残念ながら難解だった。バック・インレイの Ben Weasel による揶揄(か罵倒なのか分からないけれど)*1に、彼らも一応はパンクの住人と看做されていたのだと逆に気付かされる。ハードコア/エモ/インディーの関係性(と受容)が学べる、血で血を洗うような年表もしくは『Fucked Up + Photocopied』の続きみたいなものを読んでみたい。*2

 焙った方が旨い、と持参したガスボンベにバーナーを取り付けている。手慣れた様子に「寝てないっすよね?」気を使うと「仕事ですから」涼しい顔で笑ってかつ我が物顔で皿を並べ始める。「パパ、車でずっと寝てたんだよ」としつこく言っていた子供は無視された。自分もそれに倣って黙っていた。(口内炎が悪いんだ) 。宣言解除後、即予約して釣ってきたという**魚、刺身も塩焼きも全部美味しかった。(涙を流しながら食った)

 喧騒の中で桜は満開だった。半分朽ちた切り株に腰を下ろして強そうな煙草を吸っていた老人が立ち去り、後に残されたのは白い欠片。舌の裏がずきりと痛む。砂場の上の丸太の一本橋を子供がはしゃいで渡る。母親と叔母にあたる人がやや心配そうに眺めている。並んでいる二人の姿はあまり似ていないが、笑った時に見せる歯の並び具合は一緒だった。「水の悪い所で育ったから」よく嘆いていたが、さりげなく自慢かしら、これまで自分は思っていた。旦那(と書く)はベンチに座って画面を動かし続けている。この夫婦には会話らしい会話が無いな。帰った後、今度はこっちの心配をせねばならんのだから、おっとっと、くそガキを支えている場合ではない。

 

*1:

pitchfork.com ピッチフォークでも同じ内容が語られている

*2:

www.reddit.com 89年は一枚も挙げられていない。何故?

暴力大将 沈黙の費用

 がさがさ音がするので、瓶の口を親指で蓋しながら戸を開ける。スポーツジムの営業時間が通常に戻ったとかで、「俺も行く」迷惑そうな後を追ってこんな時、マスクはとても便利だ。

 禁酒期間は終了した。飲酒を再開してからの、当初4日おきの頻度が2日に一遍へ変化するのは早く、やがて軽いお酒なら大丈夫との慢心から連荘が始まり、一日抜いたら体調が全然違うわ、妙な自信を得てさらに勢いづく。毎夜のジンで心臓が苦しくなり、ウイスキーのカルピス割というバカな飲み物で肌が荒れた。

 信号機のボタンに手を伸ばすと「だから押さなくていいって」、気持ちばかりの左右確認の後、駆け出して行く。中央の島に着いた辺りで、反対車線に合流する一台の車が見えた。案の定、ハイビームで照らされてら。なんでいつもそうなの?訊ねると「効率の問題」とのこと。ふん。

 黒ずくめの若者がコーヒー牛乳を二本まとめて鷲掴みする、横で、自分は腕を組み冷蔵庫の中を見つめている。地酒めいた瓶ビールが飲みたいがはたして栓抜きを借りることができるだろうか。ここはコンビニだぞ?

 結局、停めてあった赤の他人の自転車の車輪で外して、世が世なら捕まっている。「さてと」一口含んで見渡せば、猛スピードで車が過ぎて行った、街路樹が花開いた。……桜にしては花びらが大きいし匂いも独特である。調べればハクモクレンのようだ。ところどころ剪定されていて、その切り口が美しい…じゃなくて嫌な世の中だ。お隣りはおそらくヤマザクラ。案外荒々しくできている表面を撫でながら、あんたは特別なのかい?、ところがよく見ればこちらもきちんと管理されている。やはり切り口の木目が可憐で、加工品が法外な値で売られるのも納得だ。

 ♪♪  放射能えらい♪ 誰も差別しない♪ 誰にも負けない♪  ♪♪

 ボタンを押すとすぐさま信号が変わった。車がどんどん溜まる。渡るのは自分ひとりだった。なるほど確かに社会的損失だ。 ー この花壇は**地区に故郷をなんたら会の協力によって整備されています ー はぁ~うるせーうるせー。草花を調べるアプリを操作する。便利な世界に生きている。

絶対的アグレッション

 金曜は風が吹き荒れて、未明に降り出した雨がやがて豪雨となり昼過ぎまで続いた。音量を上げざるを得ない程の雨脚。2度目の映画『グリーンブック』で、またもや同じ場面で泣いてしまった。政治的な批判を目にした後でも、やっぱり同じところで涙を拭ってしまう。

 地域振興券を使ってみようと提案したところ、既に新聞購読料として支払われていた。一瞬、見合ってしまうような間があって、二人して乾いた声をあげる。一緒に出かけた。とはいえ、用足しは別行動。自分は、まあ、レコードを買った。CDで持っているので内容は知っている。お金を渡す時は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたと思う。

 食い気の却って収まらない食事を済ませ、帰る。チートスが食いたい。アボカドチップスでもいい。目が疲れ、肩が凝って仕方ない。小島信夫の短編で「低血圧なのに眼底出血」云々の話があったが、題名はおろか内容すら思い出せず苦悶する。とにかく右の目頭と目尻がヒリヒリするので目蓋を閉じると瞳に人工的な赤い細かな網目模様が現れる。

 跨線橋の階段にて、足元注意を促した。得意げな調子が笑いを誘ったようだった。実際、水を含んだステップは良く滑った。目の周りを気にしながら上って行く。橋上のクランクに差し掛かったところで後ろから服を引っ張られた。排水溝が詰まってできた深い水溜まりに危うく足を突っ込むところだった。桜はまだ早かったが、平和な一日を実感した。他は知らない。

 帰宅。こんな時間でも鍋や包丁を動かしている横でレコードを広げる。「リルケじゃん」「へ?何が」うわ~、さすがだ~。感嘆ついでに「atrophy ってどういう意味?anathema って何?」など歌詞について次々質問すると、易々と答える。昔、友人のバンドを見せられて、はいはいエモ系ね、と心中、大いに白けていたが、終演後は酒に酔って賞賛を繰り返した。言われた方は困った表情を浮かべて、それが癪に障るのだった。頭のいい奴は会話に変な間を置くなあ、と思って後日、権威勾配を利用して真似てみると大変気持ちが良かった。反省している。ところで、そいつが例の「言わないとゴムを付けないばか男」だと知った時の心中たるや。

私の嫌いな私の世代

 数日前に半値で買った無糖の紅茶が捨て値で売られていた。今度は六本ひとまとめにされて売り場に山を作っている。一口飲んで甘さに驚いて、何を思ったかお湯で薄めるとさらに香り立ち、これで酒を割ったらさぞかし美味かろうと思っていたのだった。歓喜して手に取ったはいいが、飲む気が起きずまた数日が経過する。

 「これさ、何?」しばらく置き放しの物を足先でつついている。ビニール袋が床を斜めに滑る。見たことのないズボンを履いている。「嫌がらせっす」どうしてそんな言葉を吐いたのか。実家で出された田舎の紅茶にほとんど口を付けなかったのが、何故か思い出された。いや、覚えている。

 うん、これはいつもと違う感じだ、紅茶をがぶ飲みした後、一人ベッドの上でぐにゃぐにゃになっていたら、悲鳴のような歌声が漏れ聞こえた。喜び勇んで部屋に入ると、見ていた携帯を伏せる。「懐かしいの聴いてんね」「……」「あ、蒼いジャケのやつからか」表情が曇り出したので退散しようとして、「それ、俺の?」「借りたけど。もう履かないんでしょ?」割にいい色のいい雰囲気・質感であった。

 夜のコンビニへ。小さな公園の二人用ブランコがオレンジ色の網で囲われていた。帰りしな、排除無しの椅子に腰掛けて、さみー。飲み終える頃には足はだらんとなって、背もたれに置いた指先は縁をハイハットしている。 ー ジャングルジムとゾウさん滑り台が黄色と黒のビニールテープでぐるぐる巻きにされて、微笑みの同一人物による四枚横並びポスターが近所に貼られまくっている ー 空き缶をわざと忘れて5m進んで、引き返して拾う。

 甘い香りがして、何かを焼いているようだった。裾の折り方に慈愛の情みたいなのが芽生える。しかし別物に見えるな。「青いやつより良くない?」返事は薄い、が、それは分かり切ったことなので、ひとまず紅茶を運び入れた。そして、残像が甦る。灯りに揺れて見えた鎖と支柱基礎の掘り返された土塊、ポールのてらてらと厚ぼったい塗装のぬめり......あれっ!?前にあったかよブランコ。急にズボンが惜しくなった。

決死の跳躍

 稀に二人が揃って同じ番組を見ることがあった。背筋を真っすぐにして胡坐を組む様を後ろから観察して、相変わらず姿勢が良いなと思った。そのままを口にしてみると、ふふんと笑って胸を反らした。ほっとした自分も実はテレビが気になっている。向かってくる棒を仰向けになって避ける、という競技に男性アイドルと女性俳優が挑んでいる。私は何かを期待して待っているのだ。

 グループの中で一際麗しいメンバーが登場した際、斜めにあった瞳が一瞬輝いたように見えたのは気のせいか。実際自分もその美しい顔に惹かれながら、やはり別のことを考えていた。ー コンビニで品物を受け取る、というのはどうだろう ー 

 或るパンク商品にハキム・ベイのT.A.Z.が紐付けされていて感心した。自分はポルノを探した。その男性アイドルと関係があったと噂されるAV女優の名前を検索バーに打ち込む。支払いの段になり、ついに一線を越えるのかと手が震えた。ややあって、配達先の問題が生じる。そうだよ、どうしよう。

 帰途、人の流れが途切れたところで鼻穴をマスクの外へ出す。呼吸が楽になって魂の解放だ、まあまあ寒かった、梅はまだ咲かぬ、ト、これは初めての経験ではないぞ!?今更気が付き、しばし唖然とする。幼い頃の紙の本に始まって、インターネットでの閲覧は当然のこと、近年では素性を晒してのレンタル利用さえ厭わなかったのに、身に覚えがないとはおそろしや。記憶の改ざん、隠蔽、あるいは無意識による職業差別。己を省みることなく平然と石を投げていた。嘘で固めた人生が崩壊していく、理想のわたくし像(素焼き)が落下して割れる、瓦礫の頂で一歩も動けない、前方のヘッドライトがまぶしく光った、かろうじて体を脇に寄せる。

サムシング・イン・ザ・ウェイ

1.何かが引っかかる

 ケヴィン・スミスグランジ映画『クラークス』の一場面。

www.youtube.com

 SNFU『The Last of the Big Time Suspenders』の裏表紙にもホッケー競技。

www.musik-sammler.de

 スケートはスケートでもアイススケートのスケートロックなのか。

2.体育会系と赤い首の住人たち

  マイケル・アゼラッド『病んだ魂 ニルヴァーナ・ヒストリー』(ロッキング・オン)に「体育会系」の文字がやたらと出てくる。

体育会系の奴らが音楽業界にまではびこっている。(略)ゾッとするよ。

                 カート・ドナルド・コバーン(23歳)

 著者*1は「インテリで、政治的にも進歩派で、反性差別主義で、マッチョではなく音楽のわかる」カレッジ/インディー系の客と「頭の弱そうな体育会系や優等生タイプやメタルキッズ」を対比させながら、その双方から支持を得るバンドの特異な状況を描き出す。

  チャールズ・R・クロス『HEAVIER THAN HEAVEN カート・コバーンバイオグラフィー』(ロッキング・オン)においても、カート・コバーンは運動部出身者や保守的な白人貧困層(自分と同じという意味で言っていると思われる)の思想、容姿についてかなり辛辣な意見を述べている。カート本人は野球、アメフト、陸上やレスリングまでやっている。(割と人気者だったらしい。マット・ルーキン(元メルヴィンズ、マッドハニー)とは少年野球団で出会う)嫌々習わされていたとしても、12才で草と酒を経験して、はたちの頃はビールの代わりにLSDを嗜むような人ではある。

3.オリンポスの果実 

麻生太郎 モントリオールオリンピック クレー射撃 日本代表

森喜朗 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の発言

川淵三郎 日本トップリーグ連携機構会長「オシムって言っちゃったね」

・人気芸能人「切り取り」 

・銀メダリスト「何が正解?批判も肯定も難しい」

4.she's not on the menu

 パートナーの要請した家事仕事一切を無視する強心臓の持ち主、伝説の男カート・コバーン曰く(『病んだ魂』)

女嫌いでもウィリアム・バロウズは尊敬してる。ブリオン・ギーシン(brion gysin)だって完全に女嫌いだけど、彼の作品は大好きさ(略)

僕は女嫌いの連中は大嫌いだし、そういう連中とも関わりたくはないけれど、中には素晴らしい物を作り出す人もいる(略)

彼らからも学ぶべきものがあるんだよ。(略)彼らを拒否して関わらないでいるよりは、彼らの考え方を変えるように説得してみる方がいいだろ?

5.hot topic is the way that we rhyme 

 トビ・ヴェイルの影響で「フェミニズムやその他の政治、社会問題を深く考えるようになった」というカート・コバーン。大好きなカミール・パーリアはコートニー経由で知った。(『病んだ魂』)

男であることを嫌がってはいないよ。女性の側に立って、支援して、他の男性に影響を与えようとする男だっていろいろいる。むしろ女性よりも男性が他の男性に対して例を示した方がインパクトがあるんじゃないかな

 セクシュアル・マイノリティの権利を擁護するコンサートや中絶の権利を支援するチャリティー公演に出演する一方で、妹のカミングアウトに戸惑って意味不明な説得を試みる。橋の下で釣った魚を食う話はどうやら創作のようで、体育会系だかレッドネックだかに部屋を荒らされた話も本当かどうか分からない。晩年は連日のように400ドル相当のヘロインを腕に刺していたそうだが、アージ・オーヴァーキルのEddie “King” Roeserのニルヴァーナ評(『病んだ魂~』p.206)は言い得て妙だ、と思った。

政府なんてクソくらえ、現状なんてクソくらえ、アホ連中もクソくらえ、だろ

 ここから、人種差別、性差別、ファシズム、検閲主義反対に広がっていく。ショウに来た人みんなに伝わるメッセージなんだよ                                                   

 

おわり

 

追記:Steven Jesse Bernstein を聴いて カートもブラウン・カウ/タオル時代はノイズの中で詩を吟じたらしい 存命ならば今頃、スリム・ムーンやディラン・カールソンなんかとポエトリーリーディングのレコードを出していたかもしれない ミランダ・ジュライの線は…どうかな~

 

追記:カートは交際中のコートニー・ラブエミリー・ブロンテ嵐が丘*2オスカー・ワイルド『ドリアングレイの肖像』を贈ったそうだが…。『アラバマ物語』を例にムラの閉鎖性、差別の横行に憤るが、クリスの読んでいたソルジェニーツィンイワン・デニーソヴィチの一日』には興味を示さない。鬱な冬の日にダンテ『神曲』を読んで一日を過ごす(Tシャツのデザインに採用)。ブローティガン(タコマ出身)に言及する箇所はなかった。

 

 飛び跳ねるニッキ・マクルーアとイアン・ディクソン、Tシャツも素晴らしい。www.youtube.com

*1:マイケル・アゼラッドはエヴェレット・トゥルーによると「あたりさわりのない書き手」とのこと(『ニルヴァーナ:ザ・トゥルー・ストーリー』シンコー・ミュージック p.615より

*2:thrushcross grange:スラッシーでクロスオーバーなグランジ・ロックという意味か?(“grunge”)

ゴーゴー!老化作戦。

 目が覚めて、カーテンを開けると窓の外は意外に暖かかった。上機嫌で部屋に入っていくと、ソファから上体を起こして「おはよ」と。「うん。天気も良いし、どっか行く?」誘ってみるも、今日は調子が悪い、すげなく断られすれ違いざま、いやに体臭が濃かった。ちょっと横になる、遠ざかる足音に「飯はどうすんの」訊くと「オートミール食べるからいい!」きっぱり言い放った。

 「作るよ」「いいよ、何か買ってくる」と家を出て、やっぱりいい気持ちだ。穏やかな日差しを浴びて「がんばれがんばれ、いけるいける」心の声が聞こえる。市議会議員のポスターが新しく張り替えられている。いつか最年少で当選した青年も3期目ともなれば次第に貫禄が出るようだ。こちらを見据える精悍な顔付きは、IT長者や半グレを思わせる髪型と相俟って、チョビ髭なんかが良く似合いそうだ。検索すると、タカ派衆議院議員の呟きに憧れと素直な共感を寄せていた。

 2台しかないATMの一つを一人の若者が占拠している。だだっ広い待合スペースの「己」の字の列に加わり、いらいらを募らせる。密だ、とベタに思っていったん外へ出て、八百屋の店先を冷やかしてみる。で、どうして労わってあげなかったのか、あほうのように我に返り、発作的に黒色のりんごを笊ごと買い求め、再び銀行へ。くだんの人、まだ苦戦しているらしい。ようやく振り返った顔を睨みつけると、悪気ない感じの好青年で、それでいて虚ろな目をしていた。

 駅構内を抜けた先で、既に追憶となりつつある政党の市議会議員が演説の準備を始めていた。関係者は他に誰も居ないようだった。魔が差したというか、人智を超えた偉大な力に背中を押されたというか、思わず声をかけてしまう。 ー おぼつかない足取りで坂を降りていった。恥ずかしいやら情けないやら、胸中渦を巻いている。出掛けに感じた至福の境地は今いずこ?ベンチ(排除アート付き)のある公園も鯉の泳ぐ湧水池も子供連れの見物客で立錐の余地無し。近くにある老夫婦の営む定食屋へ駆け込んだ。

 お目当ての新聞は先客に奪われていた。右手で麺を持ち上げ、縦に折った新聞紙に左手を添え、半口を開けてテレビ画面を見つめている。殺意を覚えたが、ないものは仕方ない、気を取り直して『はじめの一歩』を手に取る。あんなにベトついていた表紙が綺麗に磨かれている、読み始めれば感動で涙が止まらない、動揺を鎮めるため、ホッピーを注文し、中を2回お替りして特盛の油そばを食った。酒が廻って日曜版のクロスワードや間違い探しに熱中するうち頬も乾いた。

 帰宅。遅いからもう食べた、何なの、と嘆じる。余った(というか…)食材を片す姿にかける言葉が見つからない。いっそ怒り狂ってくれた方が助かるのだが。深夜、りんごに一縷の望みをかけてみた。あれば食うとのことで、食い意地、と心和む。が、窪みに埃を発見してしまい、嫌な予感がする。「皮剥いたんだ、酸味がきつい、やわ過ぎ」と宣い、一切れで終いにした。「あっそ」憤然と立ち上がり、皿を台所へ持っていった。そのまま流しへぶちまけようかと思うが、とどまって、立ったまま残りを口の中へ放り込む。頬を目一杯膨らませ、眼を三角にして顎を動かす。そういう時に限って舌を噛むようなことはなく、やらかいだけあってすぐに咀嚼を済ませてしまった。

 

蛇足:

 

 就寝直前、ふと気になって例のオールド左翼系市議のtwitterを確認すると、案の定、昼間の事に触れた後、唐突に最低賃金がどうのこうのとほき出した。こいつ、俺のグランジファッションを見てそういう発想に至ったか、と、一人布団の中で怒りに身を震わせた。

 これが前回の記事の発端なり。

 

おちまい

 

cfdl.hatenablog.com